(第ニ十ニ話:残された時間)
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今日は純二が宗方物産の社長に就任するパーティの日。
だが純二は良之の手術決定について医師たちと議論を詰めていた。
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手術は明日に決定した事を信子が告げに行く。
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「もう一度、一日でも一時間でも、君の顔をこの目ではっきり見たい。
その為なら、もっと、全てを賭けていいぜ」
「お願い。私の顔を忘れないで。私の髪も目も鼻もくちびるも忘れないでお願いだから・・・」
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時間が無い、と嘆く良之。
「あたし、どうすればいいの?」
「俺のささやかな望みを叶えてくれるか? よし、じゃあさ、明日八時にここへ来てくれ。
万事はそれからだ」。
「もし誰かに見つかったら?」
「だいじょうぶだいじょうぶ、そんなビクビクしないビクビクしない」
「やってみるわ」
「よし・・・。(キスして)ホントおまえバカだな」
「あなたがバカにした」
「バカだから好きなんだ」
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病室を訪ねて来た植村は手術が明日と聞いて驚く。
良之は植村と信子に、純二のパーティに顔を出すように勧める。
「そりゃ、パーティーなんて下らんと思うけどさ。 彼は彼なりに、俺とは違った修羅の道を
踏み始めた。知り合いはその出発を見届けてやるべきだと思う。」
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「信子さん、私この頃思うのよ。 平凡な事だけど、やっぱり人生って取り返しが効かないって。
この年になって、もう私は昔の自分に戻れないわ。
たぶんこのまま他人を裏切り続けていくと思うの。それが実は自分をも裏切ることだって事が
分かりながらもどうにもならないのよ。 悔しいけどこれはもう私の決められた人生。
そんなふうに思うとね、今まで不幸な人だと思っていた信子さんのことが急にうらやましく
思えて来たの。・・・でもね何もかも私には遅すぎたのよ・・・」
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「アニキに伝えて。順子が手術の無事を祈ってるって」
「君は乾さんに会わないつもりか?」
「ええ」
「痩せ我慢を張るのはよしたまえ。乾さんは、明日、手術するんだ」
「純二さん、会わない事もひとつの愛なのよ。あなたそう言ってらしたでしょ?」
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非常口から抜け出した良之は花の香りに気づく。
「こんな冬にも花、咲いてるのか」
「きれい・・・名前は知らないけど白い花がいっぱい」
「白い花か・・・」

今日は純二が宗方物産の社長に就任するパーティの日。
だが純二は良之の手術決定について医師たちと議論を詰めていた。

手術は明日に決定した事を信子が告げに行く。

「もう一度、一日でも一時間でも、君の顔をこの目ではっきり見たい。
その為なら、もっと、全てを賭けていいぜ」
「お願い。私の顔を忘れないで。私の髪も目も鼻もくちびるも忘れないでお願いだから・・・」

時間が無い、と嘆く良之。
「あたし、どうすればいいの?」
「俺のささやかな望みを叶えてくれるか? よし、じゃあさ、明日八時にここへ来てくれ。
万事はそれからだ」。
「もし誰かに見つかったら?」
「だいじょうぶだいじょうぶ、そんなビクビクしないビクビクしない」
「やってみるわ」
「よし・・・。(キスして)ホントおまえバカだな」
「あなたがバカにした」
「バカだから好きなんだ」

病室を訪ねて来た植村は手術が明日と聞いて驚く。
良之は植村と信子に、純二のパーティに顔を出すように勧める。
「そりゃ、パーティーなんて下らんと思うけどさ。 彼は彼なりに、俺とは違った修羅の道を
踏み始めた。知り合いはその出発を見届けてやるべきだと思う。」

「信子さん、私この頃思うのよ。 平凡な事だけど、やっぱり人生って取り返しが効かないって。
この年になって、もう私は昔の自分に戻れないわ。
たぶんこのまま他人を裏切り続けていくと思うの。それが実は自分をも裏切ることだって事が
分かりながらもどうにもならないのよ。 悔しいけどこれはもう私の決められた人生。
そんなふうに思うとね、今まで不幸な人だと思っていた信子さんのことが急にうらやましく
思えて来たの。・・・でもね何もかも私には遅すぎたのよ・・・」

「アニキに伝えて。順子が手術の無事を祈ってるって」
「君は乾さんに会わないつもりか?」
「ええ」
「痩せ我慢を張るのはよしたまえ。乾さんは、明日、手術するんだ」
「純二さん、会わない事もひとつの愛なのよ。あなたそう言ってらしたでしょ?」



非常口から抜け出した良之は花の香りに気づく。
「こんな冬にも花、咲いてるのか」
「きれい・・・名前は知らないけど白い花がいっぱい」
「白い花か・・・」