(第ニ十三話:雲への階段[最終回])
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夜中に病室から良之と信子がいなくなったことに気付く浩たち。
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2人は「クラブF」で「時のいたずら」を歌っていた女性(マーサ三宅)と再会する。
「海に行きたいな。海鳴りの音が聞きたい」
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「死が何であるかを本当に分かった人間てのはどうしてそんな不思議な優しさを
持っているのかね・・・」
「多分、普通の人間より数倍も数十倍も激しく人生を見つめているからだ」
「俺は負けたよ。乾さんにも完全に負けた。
信子という女性も素晴らしいや。そういう彼の全てをとらえて離さなかったんだ」
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「太陽はまだ?」
「ええ、でも水平線がほんのり白んで来たわ」
「寒くないか?」
「ええ、大丈夫。あなたは?」
「(うなずき)太陽が出たら教えて」
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いきなり、ガクッと崩折れる良之。
「良之さん!」
「ちきしょう、足が。 力が入らないんだ」
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「朝凪だなぁ。 海鳴りがだんだん遠くなっていくのが分かる。
・・・日の出見たら病院、帰ろう。」
「手の痙攣が収まってるわ」
「足だってもうじき元通りになるよ。
それに目だってひょっとしたら太陽が拝めるようになるかもしれないな。
な? ・・・信じられないの?」
「信じてる。私、ずっと信じてるのよ。
きっと朝の太陽が、あなたの目を、あなたのすべてを元通りにしてくれるわ。
私あなたが海に行こうって言い出した時、そう予感したの。」
「そっか。・・・良い子良い子(信子の頭をなでる良之)」
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「どうして?私、本当に信じてるのよ?」
「だから「良い子良い子」って言ったじゃない(笑)」
「父はね、私が何かムキになって言うと決まって「おまえは良い子だ良い子だ」って茶化したの」
こころなしか、声が弱くなって来ている良之。
「俺はそんな気持ち分かるな」
「何で?」
「君はあまりにも頑固で、素直だからだ。」
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「私、変わったの。 あなたによって変わったのよ。
自分でも知らない内に、いつの間にか私の中に太い一本の樹が生えたのよ」
「そいつは、青い葉っぱ、付けてるのか?」
「ええ。 枝だって、日毎に空へ空へと延びて行くわ」
「そっか。(息を吐く良之。)何だか、俺、ホッとした気分になった」
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夜明けの光を待ちながら子供の頃やレーサーになったいきさつを話す2人。
これまでレーサーとしてスピードに生死を賭けてきた日々を振り返る良之。
「機械(車)が勝つか、俺が勝つか・・・馬鹿な事してきたな。
今だったら何になりたいかな・・・。
人間、以外だったら・・・何でもいいや」
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ハッとする信子。「良之さん!」
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風が春を運ぶ
木の芽疼き、水温む
人は笑いさざめき、されど誰も振り向かず冬を忘れる
しかし冬の仄白い顔の下に
熱い地面の火照りを秘めた、あの愛の息遣い
たとえ、雪解けが来ても、冬の死が訪れようとも
染め上げられた愛の記憶と共に
春を貫く
春を貫く
春を貫く
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4月16日(月) 晴
良之の時間が残り少ないと知ってから書き始めた日記にそれだけ記入し、
後が続かず号泣する信子。
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就職の面接を受けている信子。
「乾 信子です。」
なかなか厳しい条件を述べる面接官(「冬物語」ナレーターの中江真司)。
どうしても仕事が欲しい、と述べる信子。
「姓が変わっているが?」「亡くなりました。・・・半月前です」
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谷沢順子もモデルの仕事に復帰した。
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出版社へ就職した浩は、良之の言っていた「地図にない湖」の話をする。
北川は陸送の仕事で北海道へ。 植村典子は美容師の学校へ。
植村は関西へ残務整理へ。
「何かみんな急にバタバタ穴から這い出したみたいに忙しくなるんだね」
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「みんな別れ別れになって行くのね。 私たち2人だけ残っちゃった」
「・・・姉さん」
ウグイスの鳴く声が聞こえる。
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「太い一本の樹。 そいつは青い葉っぱを付けている」
「何だいそれ?」
「あの人が死ぬ前に私に言った言葉なの。
太い一本の樹。 そいつは青い葉っぱを付けているって」
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P.S.
1972年は、小学生だった私の心を激しくとらえた2本のドラマが放映された年でした。
NHKの「少年ドラマシリーズ」第一作「タイムトラベラー」(時をかける少女)と
この「冬物語」です。
長い間、フィルムが存在しないと言われていた「タイムトラベラー」は個人所有の
VTRが見つかりDVD化され、「冬物語」はCSでの再放送で観ることが出来ました。
幸福なはずなのに何だかさびしい感じがするのは何故なんでしょうね。
「冬物語」 CS300 日テレプラスで2012年12月一挙放送。
http://www.nitteleplus.com/program/drama/fuyu_monogatari.html

夜中に病室から良之と信子がいなくなったことに気付く浩たち。

2人は「クラブF」で「時のいたずら」を歌っていた女性(マーサ三宅)と再会する。
「海に行きたいな。海鳴りの音が聞きたい」

「死が何であるかを本当に分かった人間てのはどうしてそんな不思議な優しさを
持っているのかね・・・」
「多分、普通の人間より数倍も数十倍も激しく人生を見つめているからだ」
「俺は負けたよ。乾さんにも完全に負けた。
信子という女性も素晴らしいや。そういう彼の全てをとらえて離さなかったんだ」

「太陽はまだ?」
「ええ、でも水平線がほんのり白んで来たわ」
「寒くないか?」
「ええ、大丈夫。あなたは?」
「(うなずき)太陽が出たら教えて」

いきなり、ガクッと崩折れる良之。
「良之さん!」
「ちきしょう、足が。 力が入らないんだ」


「朝凪だなぁ。 海鳴りがだんだん遠くなっていくのが分かる。
・・・日の出見たら病院、帰ろう。」
「手の痙攣が収まってるわ」
「足だってもうじき元通りになるよ。
それに目だってひょっとしたら太陽が拝めるようになるかもしれないな。
な? ・・・信じられないの?」
「信じてる。私、ずっと信じてるのよ。
きっと朝の太陽が、あなたの目を、あなたのすべてを元通りにしてくれるわ。
私あなたが海に行こうって言い出した時、そう予感したの。」
「そっか。・・・良い子良い子(信子の頭をなでる良之)」

「どうして?私、本当に信じてるのよ?」
「だから「良い子良い子」って言ったじゃない(笑)」
「父はね、私が何かムキになって言うと決まって「おまえは良い子だ良い子だ」って茶化したの」
こころなしか、声が弱くなって来ている良之。
「俺はそんな気持ち分かるな」
「何で?」
「君はあまりにも頑固で、素直だからだ。」

「私、変わったの。 あなたによって変わったのよ。
自分でも知らない内に、いつの間にか私の中に太い一本の樹が生えたのよ」
「そいつは、青い葉っぱ、付けてるのか?」
「ええ。 枝だって、日毎に空へ空へと延びて行くわ」
「そっか。(息を吐く良之。)何だか、俺、ホッとした気分になった」

夜明けの光を待ちながら子供の頃やレーサーになったいきさつを話す2人。
これまでレーサーとしてスピードに生死を賭けてきた日々を振り返る良之。
「機械(車)が勝つか、俺が勝つか・・・馬鹿な事してきたな。
今だったら何になりたいかな・・・。
人間、以外だったら・・・何でもいいや」

ハッとする信子。「良之さん!」



風が春を運ぶ
木の芽疼き、水温む
人は笑いさざめき、されど誰も振り向かず冬を忘れる
しかし冬の仄白い顔の下に
熱い地面の火照りを秘めた、あの愛の息遣い
たとえ、雪解けが来ても、冬の死が訪れようとも
染め上げられた愛の記憶と共に
春を貫く
春を貫く
春を貫く


4月16日(月) 晴
良之の時間が残り少ないと知ってから書き始めた日記にそれだけ記入し、
後が続かず号泣する信子。

就職の面接を受けている信子。
「乾 信子です。」
なかなか厳しい条件を述べる面接官(「冬物語」ナレーターの中江真司)。
どうしても仕事が欲しい、と述べる信子。
「姓が変わっているが?」「亡くなりました。・・・半月前です」

谷沢順子もモデルの仕事に復帰した。

出版社へ就職した浩は、良之の言っていた「地図にない湖」の話をする。
北川は陸送の仕事で北海道へ。 植村典子は美容師の学校へ。
植村は関西へ残務整理へ。
「何かみんな急にバタバタ穴から這い出したみたいに忙しくなるんだね」

「みんな別れ別れになって行くのね。 私たち2人だけ残っちゃった」
「・・・姉さん」
ウグイスの鳴く声が聞こえる。

「太い一本の樹。 そいつは青い葉っぱを付けている」
「何だいそれ?」
「あの人が死ぬ前に私に言った言葉なの。
太い一本の樹。 そいつは青い葉っぱを付けているって」



P.S.
1972年は、小学生だった私の心を激しくとらえた2本のドラマが放映された年でした。
NHKの「少年ドラマシリーズ」第一作「タイムトラベラー」(時をかける少女)と
この「冬物語」です。
長い間、フィルムが存在しないと言われていた「タイムトラベラー」は個人所有の
VTRが見つかりDVD化され、「冬物語」はCSでの再放送で観ることが出来ました。
幸福なはずなのに何だかさびしい感じがするのは何故なんでしょうね。
「冬物語」 CS300 日テレプラスで2012年12月一挙放送。
http://www.nitteleplus.com/program/drama/fuyu_monogatari.html