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Channel: 漂えども沈まず
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最後の講義で

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大学1年時に「コンピュータ概論入門」みたいな講義があって、これを選択したことは
私の人生の岐路の一つだったと思う。

ともあれ、高校までと違って講義の時間は長いので学生たちも途中でダレる。

教授としては若いので威厳を保つためか、ヒゲを蓄えたA教授は生徒がダレて来ると
途中で講義の内容から外れた短い雑談をする事があった。

・心霊写真と言われるモノのほとんどがインチキか二重露光である。
・人間の脳はコンピュータと同じ電気信号で映像や音を認識する。
・人間の目・鼻・口に見える部分があると、脳は顔として認識する。
・幽霊を見た、というのは神経回路の電気信号の誤伝達である。
・「出る」と言われる古戦場跡などに外人を連れて行っても、いわれを知らないので見ない。

時折、このような短い話をして学生の興味を惹き、講義を続けた。

A教授は海外旅行が趣味で、外国の由緒あるホテルにもよく泊まった話をした。
一部の旅行者の間では有名らしい「あるホテル」に泊まった時のこと。
疲れてベッドで横になり、上半身は壁に寄りかかって本を読んでいた。

何か、言いようのない雰囲気を感じたが疲れのせいだと思っていた。

その時、部屋の右の壁を「コンコン」と叩く音がする。
次に足を伸ばした先の正面の壁で少し強く「コンコン」と音がする。
次は左側の壁で「ゴンゴン」ともっと大きな音がする。窓の外のハズなのに。
さすがに本を読むのを止めてジッとしていると、自分が寄りかかっている背後の壁で
「ゴーン!ゴーン!」と大きい音と振動がした。

A教授もさすがにベッドから飛び起き荷物から武器の代りになりそうな物を持ちドアを
開けて外に出た。
ホテルの廊下は静まり返り、誰もいない。
例の音は止んだが、最初に部屋に入った時のイヤな感じが部屋から漂って来る。

フロントに交渉して別の最近建てられたホテルに移動することにしたが
何故かという理由は言わなかったのにフロントの係はすんなり交渉に応じた。

「私は幽霊とかは信じないが、人間が備えている第六感は信じている。
 君等も「何か分からないが、ここはマズイんじゃないか?」と感じる場所には
 近づかない方が賢明だよ」

それがその年度のA教授の最後の講義での話だった。
コンピュータという理系の教授の話だけに今でもよく覚えている。

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